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好著 「幻想芸術の世界」(講談社刊)を読んで、すっかり嬉しくなったシュールなワタクシ。 [絵画]

出張の多い私にとって本は必須アイテムですが、購入費用がばかになりません。そこで「古本屋さん」というありがた~い場所でまとめ買いが通例です。先般、上野駅近くの古本屋さんで感動本(2011年の暫定1位)に出会いました。いっきに読み切って、ただいまじっくり再読中です、それがこれ。 

坂崎乙郎さん著「幻想芸術の世界」講談社現代新書、です。お値段200円くらいでした(安い!)。初版は1969年、つまり40年以上前の著作ですが、これが私のツボにはまりまくったんですね~~。

幻想.jpg

私はドイツ表現主義、ウィーン世紀末、シュールレアリズム、ラファエル前派など、広い意味で「幻想的な絵画」にココロ惹かれるのです。ゆえに、ルネサンス絵画はイタリア系のアッケラカンは全然ダメ。ドイツやネーデルランドの画家たとえばデューラー、ブリューゲル、ボッシュ、グリューネワルト、アルトドルフィーの「ダークな精神性表現」がたまらなく好きなのです。

坂崎さんの著書「幻想芸術の世界」は(よくあるタイプの)個々の画家分析だけでなく、”絵画における幻想性”がなぜ必要なのか、それが生まれた背景を解き明かす点が素晴らしいと思います。21世紀の今でこそ、ピカソどころかシュールレアリズム絵画すら「古典」となってますが、この本が書かれた60年代は幻想絵画をキワモノと見る人も多かったのでしょう。

坂崎さんが強調されるように、「目に見えないものを描く行為」こそ人間という不確定な”実存”の本質に迫る試みなんですね。シュルレアリズムの画家キリコの名言が適確に引用されています(29頁)。いわく、

価値があるのは両目を開いてみるもの。さらに価値があるのは両目を閉じてみるものだ。

「幻想芸術の世界」は豊富な知識、鋭い観察眼に裏打ちされ、スリリングに論を展開するのであります。目からウロコの連発なんですねえ。

当ブログでもご紹介したグリューネワルト作「イーゼンハイムの祭壇画」のキリスト磔刑図に対し、坂崎さんが素晴らしい考察をされている点が嬉しいなあ。(ブログ記事はこちら→クリック)。本作品にベタ惚れのワタクシは大興奮しちゃったっすよ、ふふふ。

イラストレーターなみ(?)に評価が下がった感もあるルネ・マグリッドに対する高評価も妥当と思うし、一方、ドイツの”画狂人”ことホルスト・ヤンセンや、フックスへの掘り下げも見事。もちろんサルバドール・ダリ、エルンストといった大御所もしっかりフォローされています。エッシャー絵画に関する記述もお見事ですねえ。

ヤンセン.jpg

繰り返しますが「幻想芸術の世界」は単なる”画家論”ではありません。作品の背景にある「精神性」を美術史の流れにおいてあぶり出そうというアプローチが魅力的なんです。高校で習った世界史にしても歴史上の大事件を、ブツ切りのイベントと捉えず、背景や互いの”関連”に踏み込んでこそ「意味が読み解ける」と思んです。それと同じことですよね。

とりとめなく恐縮ですが、読んでいて、おおーーっと感動したのは7章「狂気の色彩」。セラフィーヌのことが記載されているんです!映画にもなりました。40歳まで女中をしていた教育もない女性セラフィーヌが、たまたまそのアパートを借りた美術商に作品を見い出され画家となったのです(1910年頃のハナシ)。彼女の激動人生も興味深いですが、絵画教育を受けていない彼女の描く「花の絵」の放つ妖気と迫力、というか、ずばり「狂気」に圧倒されます。それは現実の花ではなく、彼女の目と脳というフィルタを通じ再構築された”精神性を付加された花”なんですね。極論言えば、対象は花である必要もないのですが、画面いっぱいに展開する極彩色の不気味な「何か」から漂う”不安な空気”は私のココロを離しません。 セラフィーヌの絵について触れた絵画論などこれまで読んだことがなかったので感動してしまいました。

セラフィーヌ.jpg

さてさて、六本木の美術館で2月9日から「シュルレアリズム展」が始まりました(って、急にまとめかよ)。この展覧会には絶対いかねばなりません。一昨日は、強烈な強風が関東を襲い、行こうと思って諦めましたが・・・よおし、来週は行くぞお!


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コメント 2

azm

ども!
坂崎乙郎さん、昔「絵とは何か」とかシーレの評論を読みました。北海道美術館での講演も聞きました。うーん、内容は忘れたけど。「未完のランナー-深井克己展-」の時だったな。絵でも音楽でもそうですが、作品の背景、作者の人となりを知るとより味わい深いですね。
国立新美術館のシュルレアリスム展面白そうですが、混むんでしょうね。人の後ろ頭がシュールっぽい展覧会になりそうで、行こうかどうしようか、悩ましいです。がらがらの美術館が好きなんですが。なので最近はメジャーな展覧会には行っていないですぅー。
国立新美術館の建物自体にも興味あるんですが。うーん、黒川紀章でしたっけ。どうだろ?!
by azm (2011-02-21 00:18) 

門前トラビス

To azm様、コメントありがとうございます。
坂崎乙郎さんの本は今でも出版されているものがけっこうありますが、読後の納得感がありますよね~。
澁澤龍彦さんや、大御所、瀧口修造さんにも優れた幻想芸術の評論がありますが、かなり「主観的」で、それはそれで面白いのですが、坂崎さんのようにカッチリとポイントを書いていただけると、素人の私には助かりますね。
シュルレアリズム展ですが、土日は混むことが予想されますね。ずばり、平日AMが狙い目ではないでしょうか。それでも混んでいるかな・・・追ってレポートさせていただきますね。
by 門前トラビス (2011-02-22 21:58) 

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