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独創か異端か?コパチンスカヤの弾くチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」。クラシック音楽演奏が大胆に変わる? [クラシック音楽]

過去1年間にリリースされたクラシック音楽CDから、賛否両論の評価を受けた独創的(異端?)演奏を取り上げたいと思います。

本題の前に、クラシック音楽の「演奏」について私なりに考えてみました。

よほどキテレツな現代音楽でもない限り、クラシック音楽のレパートリーは作曲家の残した楽譜通りに、かつ「その楽曲にふさわしい」演奏をするのが常識(らしい)です。問題は、その曲にふさわしい=「その曲らしさ」(あるいは、その作曲家らしさ)という概念ですね。バッハはバッハらしく、ベートーヴェンはベートーヴェンらしく弾く・・・と言ったって、その「らしさ」って何なのよ?乱暴に断言すると、そうゆうものだ、と広く認知された「慣習」「思い込み」に過ぎないのです。ですから慣習を無視してエキセントリックな演奏をしても、一概に間違い、とは言えないはず。

ところがクラシック音楽界は、奇妙というか偏狭で、一風変わった演奏(解釈を含む)に対しては批評家のみならずリスナーもネガティヴ評価を下す傾向があります。いわく「奇をてらった演奏」「曲の本質を無視」「面白ければ良いわけではない」etc・・・うーん、まったく納得いきません。

ジャズでスタンダード曲を弾く際、個性的アレンジや独創的な味付けは、むしろ高く評価されますもんねえ。と書いてて気づいたけど、クラシック音楽だって個性あふれる演奏はありました。グレン・グールドが「ゴルトベルク変奏曲」をとんでもない超高速で弾き倒し、バッハ概念を揺るがしたのは1955年、今から60年も昔なんですよ。

その後だってヴァイオリニストのナイジェル・ケネディさん、ピアニストのフリードリヒ・グルダさん、アファナシエフさんなど異端と目される演奏家は登場してます。指揮者アーノンクールさんは異端児として出発し、晩年はウイーンフィルやベルリンフィルまで振る大御所になったわけですし。

かように異端なアーチストは、どの時代にも存在しそれなり評価もされているのに、なぜか全体でみればクラシック音楽ファンは保守的に「その曲らしさ」を求めるわけです。結果、個性とは名ばかり、誰が弾いてるのか、どの指揮者が振り、どのオケなのかなど、到底、言い当てられない均一で中庸な録音ばかりが世間に氾濫するのです。

さて、いよいよ本題です。以下に取りあげるディスクは、他の演奏との聞き間違えなどありえない唯一無二の強烈な光(異彩)を放っております。クラシック演奏も、ついにここまで来たか!一皮むけたか!と嬉しくなった次第。

いまやエキセントリックが看板となった感があるパトリシア・コパチンスカヤさんの弾くチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」です。指揮者はワルガキなどと揶揄されるギリシャ出身の異端児クルレンティスさん。

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あらゆる意味で、このCDは大胆不敵です(ジャケットも、カップリング曲も)。エモーショナルな演奏、という評価はクラシック音楽でもフツウに使われますが、コパチンスカヤさんのヴァイオリンはエモーショナル(感情的)どころか激情の嵐であって、革新的をこえた攻撃的なものです。

大人げないほど気持ちが入っているのでドン引きしますよ。フレーズの一拍目にグワシ!と、ことさら大きな音をツッコんでみたり、演歌のごとく「こぶし」や「ため」をぶちこむ。泣かせフレーズは、歌舞伎役者が見栄を切るような「エイッヤッ!」というアザトイ装飾をしたあげく、急発進、急減速はお手のもの。興が乗ると叫び声のような荒れた音を出す・・・従来の慣習に照らした限りは、奔放かつ自由きままなこの演奏を「チャイコフスキーらしい」とは到底、言えないでしょう。

「中庸で節度ある上品な」がクラシック演奏の規範とすれば、コパチンスカヤさんは正反対で「破天荒、節度などおかまいなし、下品ですらある」わけです。

ゆえにこのCDは、過去(の定番的演奏)と比べ、どこがどう違うか、という「差異」で語られがちです。今回、記事を書くにあたって、当該CDに関するブログ記事をいくつか拝見しましたけど、案の定、「何が違うか」に主眼がおかれ、なんとな~く当惑気味に終わるパターンがほとんどでしたね。

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しかし。

私に言わせれば、他演奏との比較論なんぞ、さっさとゴミ箱に捨てるべきです。

バロウズ先生の至言「Everything is permitted」=すべては許されている、のとおりです。演奏家が勇気をもてば、演奏慣習という束縛から脱却し飛翔できることをコパチンスカヤさんは証明したのです。さらに一流のアーチストが考え抜いて行き着いた演奏は、既存の何とも違っても、虚心に音楽に耳を傾けるリスナーに感動をもって受け入れられること、を示しました。切り口を変えれば、クラシックの真の名曲は、多様な演奏形態に十分に耐えうるもの、ということ。

正直申しますと、私も、このディスクを一聴したときは、受け狙いのヘンテコ演奏に思えました。しかし病みつきになる魔力があって、引っ張られるように何度か聴くうち、これこそ魂のこもった至芸、名演奏と、絶賛に転じたのであります。

コパチンスカヤさんのぶっ飛びっぷりは、片鱗ではありますが、日本でのコンサートのアンコールの様子から知ることができます。良いねえ~この表情。このパフォーマンス。(YouTubeって便利だよなあ。。。)

 

他にも2枚のCDを紹介するつもりだったんですが、コパチンスカヤさんの件を長々書いてしまったので、そちらは別の日にアップしましょう。今日はここまででお終いっ!チャオー。


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しのぴぃ

コパンチスカヤさんの演奏、早速YouTubeで聴いてみました。なるほど、ぶっとんでますね。それからさらにベートーベンのクロイツェルも聴きました。彼女のアレンジの仕方、好きです。このくらいの勢いで弾いてほしかったのだ!と初めてクロイツェルに対する自分の気持ちに気づかされました。

by しのぴぃ (2016-05-17 11:58) 

門前トラビス

To しのぴぃ様、コメントありがとうございます。
クロイツェルは、まさにコパチンスカヤさんにぴったりの楽曲ですね。あの曲ならば、大胆に冒険できますものね。
彼女にはこれからもどんどん突っ込んだ演奏を披露してほしいと思います。
by 門前トラビス (2016-05-22 23:25) 

Nat

いやー、コパチンスカヤ、びっくりしました。これだよこれ、という感じ。とってもロシアを感じさせる演奏で、これに比べて「定番」の演奏はいかにも西洋的。特に3楽章。ロシアの香りがぷんぷん。あー、チャイコフスキーはロシア人だったんだねぇと。これを聴いたらもう戻れないでしょう。

コパチンスカヤは「独創的」とか言われるけど、ベートーヴェンの演奏解説を見る限り、とても真摯に楽譜に向き合っている人です。彼女に言わせれば、慣習的な予断を廃して楽譜通りに弾いているんだけど、でしょう。グールドやグルダがそうだったように。これからの演奏のスタンダードが変わってしまう予感がします。
by Nat (2017-03-02 01:34) 

門前トラビス

To Nat様、コメントありがとうございます。
そうですね、まさに「これだよ!」と言いたくなる見事な演奏ですね。
彼女の今後の展開がおおいに楽しみですね!
by 門前トラビス (2017-03-08 04:26) 

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